礬温泉地区は相当な地熱地帯で、地下30cmあたりにはもう温泉脈があり、地表から勢いよく温泉ガスの蒸気が噴出しています。ここに立つわら葺き屋根の小屋、これが江戸時代より約300年つくり続けている湯の花小屋なのです。
世界唯一のこの小屋方式から生まれる明礬温泉地区ならではの湯の花は、他生産の硫黄華とは根本的に品質が異なり、小屋方式のこの製法も世界ではここだけ。
では、この湯の花、一体どうやって出来るのでしょう。
ず、湯の花づくりに欠かせない小屋作りは、噴気の多い場所が選ばれます。温泉ガスが均等に小屋内で噴出できるよう栗石で石畳みを作り、この地特有の青粘土(学名・モンモリロナイト)を敷き詰め、その上に三角屋根のわら葺き小屋を建設します。
地下のガスの蒸気が栗石のすき間から青粘土の中に入り、ガス中の成分と青粘土の成分が結晶。
この結晶が湯の花で、1日約1ミリずつ成長し、40~60日かけて採取、精製、乾燥して製品化されます。(図1)
縄文時代の住居のようにも見える湯の花小屋。
雨降りでも小屋内部の温度を一定に保ち、雨漏りはさせません。その理由は、水分をわら屋根が吸収、蒸発させ、水滴とならず屋外へと放出させるので、地表から成長する湯の花を水分で溶かすことがないのです。
しかし、職人が苦労して作った小屋も、温泉蒸気の作用で寿命は長くて3年。そのたびに葺き替えます。
昔の人々の深い経験と知恵から生まれた湯の花小屋は、江戸時代の“近代的化学工場”と言えるでしょう。
図1